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医療大麻治療記 ② (大麻ライターKAZU)

大麻ライターKAZU (フリーマガジン「I am CBD」など、カルチャー系媒体で執筆中)

タイに渡航して二か月がたち、首の痛みはかなり改善されました。マッサージも様々なお店で受け、毎回2時間ほどしっかりと施術を受けた甲斐もあり、快方に向かっています。マッサージ師に聞くと、痛みから筋肉が硬直し、他の箇所にも負荷をかけているようで、左右でこっている場所も違うためかなり難しい、と言われつつも、少しずつ良くなっています。その中でいくつか試してみたことがあるのですが、大麻を使用してマッサージを受けた場合と、使用せずマッサージを受けた場合の差について、感じたことや施術した方からの感想をまずはお話してみたいと思います。

医療大麻と筋肉の硬直

前回の治療記は私の主観的な感想を述べましたが、マッサージ師に身体の反応がどう違うか、ということについてたずねました。大麻を使用した場合の方が身体のほぐれ方が良く、修正がしやすいとのことでした。筋肉のコリは圧力のようなもので、正しい位置に戻しながらその圧を逃がすそうですが、使用した場合の方がその圧力のぬけがよい、という感想でした。

タイには「セン」といってエネルギーの流れ道が身体にいくつかあると考えるのですが、そのセンを整えやすい、とも言っていました。アーユルヴェーダにも似たような考え方があり、中国では「経路」と言ったりもします。これは解剖学上では説明できない概念だそうですが、そういったエネルギーラインも整いが良いとも言われました。

首をかばって巻肩になり、腕も内に捻じれがあり、首が前に出てしまい背中の筋肉に硬直が見られ、痛みのある期間が長くなり他への影響も大きくなっていたようです。一時帰国して、福岡で見てもらっていた先生を受診しましたが、驚くほど改善されている、と感想をいただきました。交通事故などで身体に痛みが残存している方で、1〜2か月タイで医療大麻とマッサージで療養するという選択は、現実的にその後の人生に良い影響を与えるのかもしれません。

脱毛症について

痛みとストレスから発症した円形脱毛症ですが、こちらは医療大麻でもCBDが特に良い効果を出してくれました。円形脱毛症は、リンパ球異常や肌と髪の酸化の影響など様々な原因が言われますが、免疫異常により起こります。こういった免疫異常にはTHCよりもCBDが有効です。タイではTHCが主でCBDはあまり見かけません。様々な製品を試しましたが、CBDに関してはタイよりも圧倒的に日本の方が製品も多く、またその品質も高いです。幸いにも高品質なオイルが手に入ったので、オイルを一日に3〜4回、0.5〜2ml程度を経口摂取し、脱毛した箇所にはセラムを塗っています。

投薬による脱毛治療の場合、ステロイドの塗布と経口薬の利用が一般的だと思います。フィナステリド・ミノキシジル・ザガーロといった薬が主に使われます。フィナステリドはリンパ球異常の鎮静により脱毛を止める薬。ザガーロはフィナステリドではアクセスできないタイプのリンパ球異常にもアクセスします。ミノキシジルは経口でも塗り薬でも使われますが、発毛を促す薬と言われています。ミノキシジルを飲み始めた頃は初期脱毛と言って、脱毛が一時的に激しくなり、その後に鎮静、2か月〜半年後くらいから髪が生え始めると言われています。その際は黒い髪が少しずつ生えてくる方が多いようです。

CBDを利用した場合、脱毛した箇所からまず白髪が生えてきます。私はCBDを摂取し始めて二週間ほどから白髪が生え始めました。まだ治療途中ですが、一部の白髪の根本が黒くなってきており、脱毛範囲は少しずつ狭くなってきています。重要なことは、上記の薬とCBDは作用するプロセスが違い、併用が可能ということです。脱毛への対処療法として上記の薬は自費診療で一般的だと思いますが、それらと併用してCBDを利用するというのは新しい選択肢となるかもしれません。

医療大麻とアントラージュ効果

筋肉硬直をゆるめたり、脱毛症に効果のある成分はそれぞれ違いますが、医療大麻での治療を考える上でとても重要な、アントラージュ効果について少し解説してみます。

アントラージュ効果とは、CBDなどの単一で純度の高い成分を使うよりも、THCやCBNなどその他の成分と一緒に摂取したほうが、効果が高く出るという面白い性質があります。例えば難治性てんかんに利用する場合、CBDだけでは症状を止められない方も、THCを一緒に利用すると驚くほど速く症状が止まり、また使用量も少なく済みます。また、複数の成分を一緒に摂ったほうが耐性がつきにくいとも言われています。

医療大麻は精製した製剤もありますが、乾燥させただけの大麻花穂、いわゆるバッズやフラワーと呼ばれるものが流通しているのは、製剤よりもそのままの大麻のほうが治療効果が高いことが多い、というのが理由にあります。

一方で、複数の成分を同時に摂ると、どの成分がどのような効果を出しているかが分かりづらいため、モニタリングが非常に難しくなります。また、いくつかの成分は酔ったような感覚を引き起こすため、子供や仕事上の理由でそういった乾燥大麻を使うことが難しい方に、成分量を調整した製剤が使われます。また大麻は様々な品種があり、品種や栽培方法によって含有される成分のレシピもそれぞれ違います。医療として使う場合、こういった揺らぎを治療に持ち込みたくないという考えもまたあります。

現在では、そういった酩酊成分を含まない品種が開発されたり、販売する大麻にどんな成分がどれくらい含有されているか成分表を提示したり、フラワーでの治療がしやすい環境も整ってきています。しかし、これを医師が処方することは難しい(個人差も大きいうえに含有する成分の種類が多すぎる)ため、「嗜好用」として自分の判断で医療利用もできる、という形にカリフォルニアなどでは落とし込まれています。

つまり、嗜好用大麻の側面には、医療として提供することは難しいが、セルフケアとして自己責任で使用する、人権保護の観点から許されている部分があります。

嗜好用大麻は社会的に医療大麻?

嗜好用大麻は、いわゆる酩酊成分を強くしたものも多くありますが、実はこれも多くがセルフケアに近い利用と考えられています。例えば仕事帰りに一杯のお酒を嗜む方も多いと思いますが、これはストレス解消や不眠に対するセルフケアの一部と考えられます。嗜好用大麻を酩酊目的で使用した場合も、これに近いものが多くあります。

日本ではアルコールは一般的なドラッグですが、世界に比較し、その消費量がとても多いことが知られています。少量であれば、ストレス解消や身体を温めたり、代謝をよくしたりと体に良い効果もありますが、何事も過分な摂取は毒となります。日本ではあまりその害を考えられることは少ないですが、アルコールによる日本の社会的なダメージはとても大きいと考えられます。

大麻はアルコールに比べダメージが穏やかで、二日酔いで頭が痛くなるようなことはありません。身体へのダメージはアルコールやタバコの四分の一程度と考えられています。また、大麻は免疫の復調や神経炎症の鎮静を得意としており、嗜好用として利用したが、結果的に体調が良くなった、という方も多くいます。例えば、ストレスで不眠や肌荒れをしていた方が、大麻を喫煙したら一週間ほどで肌も回復したり、生理不順が治ったり、副作用的に治療効果が出るケースも多くあります。また、その他の薬物依存からおこる禁断症状を抑える効果も大麻にはあり、大麻はイグジット・ドラッグ、薬物問題の出口になる薬として認識されてきています。

現在の日本では、市販薬のOD(過剰摂取)などが問題になっていますが、ここに大麻をイグジット・ドラッグとして適応した場合、依存症の治療や、ODによって受けた身体のダメージを癒したり、複数の良い効果が期待できます。嗜好用が合法の国では、酩酊目的で大麻を求めても、結果的に社会に良い効果が出ることから解禁されているというのは、日本ではあまり知られません。

また、大麻で酩酊状態になった場合、粗暴になることがないことも大きな理由にあります。アルコールを多量に摂取した場合、凶暴化する方がいますが、大麻ではそういったことはまず起こりません。アルコールは今や、世界最悪のドラッグと言われていますが、日本はそのアルコールの消費量がダントツに多く、それに絡む事件も多くあります。また、大麻が違法だった国は、マフィアが大麻の販売する場所、いわゆる縄張り争いがありましたが、合法となったことでその争いの種も無くなり、治安は回復しています。日本では暴力団から半グレにその市場は移りましたが、同じような効果が期待できると考えられています。

もし仮に、日本で医療・嗜好用大麻が解禁された場合、お酒の消費量は減り、それにまつわる問題も減少、市販薬のOD問題の多くは大麻に移行し、若者の健康、ひいては社会的な生産性にも良い効果があると考えられます。

このように、嗜好用大麻は使用そのものが医療になることがあり、社会的にも良い効果が出ることが多く、社会的医療大麻などと呼ばれたりするのはこれらが理由にあります。

セルフケア利用でもガイドは必要

少し話が逸れましたが、大麻によるセルフケアは様々な効果がありますが、大麻を摂ればなんでもいいというわけでもありません。例えば統合失調症の方には医療大麻の投与は慎重になる必要があります。CBDをメインとした品種であれば効果的ですが、THC優勢の品種はパニック障害を引き起こす可能性があります。またリラックスを目的とした場合や、気分転換に用いる場合でも選定は変わってきます。

タイではTHCの割合や品種名などは公開されていますが、症状に応じた案内が可能なディスペンサリーは少なく、CBD優勢の品種は若干ありますが、含有割合などは公開されていないケースが多いです。

また、ディスペンサリーによってその品質もバラツキが大きいので、合成THCなどが添加されていないかなど、見るべきポイントは多くあります。良い品質で必要な品種を探すには、まず信頼できるディスペンサリーとバドテンダーを探すことからはじめるのが良いでしょう。タイは気温が高いため、露地栽培の場合、朝露によってカビがついていることもあります。

良い農場から提供される高品質な花穂と、それを選定するガイドがいなければ、効果的に使うことは難しいです。そしてオイルもまた同様に、よい全草から絞られたもので、成分分析はもちろん、肥料や金属などが含有していないかを確認する分析表が出ているか、またそれが正当な分析かなどを見分けるには、それぞれ知見が必要です。

ふつうはそれを判別するのも難しいため、まずは信頼できるクリニック、ガイド、ディスペンサリーを見つけることが、医療大麻の第一歩と言ってもよいでしょう。

AGA社と提携するCOAグループは西洋医療クリニックともMOUを締結しており、日本人が運営する高品質なファームとも提携しています。ここではフラワーの販売は行っていませんが、クリニックへ高品質なオイルを提供しており、様々な免疫疾患や精神疾患、体質改善に最適なオイルを購入することが可能です。CBDをメインとしたオイルもあり、医療として受診し、購入することが可能です。

もちろん他にも選択肢はあるでしょうが、一つの基準として受診し、他のオイルやフラワーと品質を比較するのはとてもよい知見になると思います。少なくとも、タイで手に入る製品としては、かなり品質が高いオイルです。これを基準に製品やフラワーを選べば、あなたの治療はより効果的なものとなるのではないでしょうか。

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